大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所飯塚支部 昭和34年(ワ)47号 判決

原告

川上中

外一名

被告

興亜火災海上保険株式会社

主文

被告等は各自、各原告に対し各金八万一千三百七十八円及びこれに対する被告山下年久は昭和三十六年二月二十四日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を、被告興亜火災海上保険株式会社は昭和三十四年五月十二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払わなければならない。

原告等のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その二を被告等の負担とし、その余を原告等の負担とする。

この判決は、原告等において被告等に対し各金五万円の担保を供するときは、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

原告等訴訟代理人は「被告山下年久は各原告に対し各金十五万円及びこれに対する昭和三十六年二月二十四日から支払済まで年五分の割合による金員を、被告興亜火災海上保険株式会社(以下被告会社と略称する)は各原告に対し各金九万円及びこれに対する昭和三十四年五月十二日から支払済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払わなければならない。訴訟費用は被告等の負担とする」との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、

「(一) 被告山下年久は昭和三十三年一月三十日午後四時過頃、同人の所有にかかる軽自動車(オートバイ)を運転して福岡県嘉穂郡穂波町公民館前県道上にさしかかつた際、折から自転車に乗つて前方から進行してきた原告等の長男訴外亡川上征彦とその自転車に右軽自動車を衝突させ同人を路上にはね飛ばして顛倒せしめ、同人に後頭部打撲兼頭蓋内出血の傷害を負わせたが、その結果同人は同月三十一日午前零時五十分頃同県飯塚市所在青山外科病院において遂に死亡した。従つて同被告はこれによつて亡川上征彦が蒙つた財産上の損害を賠償し、また同人の実父母である原告等の蒙つた精神上の苦痛に対する慰藉料を支払う義務がある。

(二) 訴外亡征彦は本件事故当時満十七歳十ケ月十一日であつたから同人が満五十五歳まで生存するものとして、なお少くとも満三十七年一ケ月間は働くことができるものと考えられる。そして同人の月収はその当時平均金八千円であつたからその間の全純益はすくなくとも金三百五十六万円に達する。したがつて征彦は本件事故により右金額に相当する得べかりし利益を失い、同額の損害を蒙つたものというべきである。原告等は右征彦の実父母として同人の死亡によりその損害賠償請求権を相続により共同で承継取得したものであり右賠償請求権を各原告の相続分に応じて分割すれば各原告は各金百七十八万円の損害賠償請求権を有する。そこで各原告はその内金として各金十万円の支払を求める。

(三) 次に原告等は本件事故のために一瞬にして最愛の長男を失つたのであつて、亡征彦が商人として大成することを期待し将来の楽しみとしてきた原告等の蒙つた精神上の苦痛は測り知れないものがある。従つてこれに対する損害の賠償として被告山下は原告各自に対し少くとも各金五万円の慰藉料を支払う義務がある。

よつて原告等は同被告に対し、以上の財産上精神上の各損害賠償として各合計金十五万円及びこれに対する昭和三十六年二月二十一日付訴状訂正の申立書送達の翌日である同年同月二十四日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

(四) 被告山下年久は前記軽自動車の保有者として被告会社との間に自動車損害賠償保障法(以下保障法と略称する。)に定める自動車損害賠償責任保険契約を締結していた。そして前記の保険事故は右保険期間中に発生し、そのために川上征彦が死亡したのであるから、被告会社は保障法第十六条により政令で定める保険金額の限度において損害賠償額金三十万円の支払義務がある。そして原告等は右征彦の実父母として各自右損害賠償請求権の二分の一宛を相続したものであるところ、被告会社は保障法第十七条に基く損害賠償額の支払のための仮渡金として金十二万円を原告等に支払つたから、なお残額金十八万円を支払うべきである。よつて原告等は被告会社に対し、原告各自に対し各金九万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和三十四年五月十二日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである」

と述べ、被告等主張の抗弁に対し、

「被告等主張の抗弁事実は否認する。本件事故にあたり被告山下年久は衝突前約三十米前方から進行してくる前記征彦をみとめ、且つ当時附近には多数の学生が群集しており、又軽自動車と自転車とはその性能において多大の差異があるのであるから、かかる場合およそ自動車を運転する者としては絶えず前方に注意を怠らず、万一衝突等のおそれのある場合は進行を一時停止するか又は除行をする等事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然進行した過失により該事故が発生したものであり、訴外亡征彦にはなんらの過失もない」と述べた。

被告等訴訟代理人は「原告等の請求を棄却する、訴訟費用は原告等の負担とする」との判決を求め、答弁として、

「原告等主張の請求原因事実中、訴外亡川上征彦が原告等の長男であること、原告等主張の日時場所において被告山下年久の運転する軽自動車(オートバイ)が右征彦の乗つていた自転車と衝突し、その場に同人を顛倒させ、その結果同人が死亡したこと、被告山下と被告会社との間に自動車損害賠償責任保険契約が締結されており、右保険期間中に前記事故の発生したこと、被告会社が原告等に対し損害賠償の仮渡金として金十二万円を支払つたことは認めるがその余の事実は争う」

と述べ、抗弁として、

「(一) 本件事故の発生については被告山下には何ら過失はなかつたものである。すなわち、当時本件事故現場附近の路上には多数の人が溢れていたので、同被告は時速約二十粁の緩速度で自動車を運行し、進行方向に向つて道路の左側(該道路舗装部分左端より約一米余右側へ寄つた地点)を進行しながら、前方注視を怠らず、前記征彦の乗つている自転車とは約一米の間隔を保ちつつ離合し得るものと予測していたところ、本件事故現場直前の地点にさしかかつた際、被害者の自転車が路上の窪みに前車輪をとられ、突然被告山下の運転する軽自動車へ飛び込んできたため同被告は急拠右へハンドルをきつたが被害者を避けるに術なく遂に本件事故の発生をみたものであつて、同被告にはなんらの過失もない。

(二) かえつて、本件事故は専ら被害者征彦に重大な過失があつたことに起因するものである。すなわち同人は当時本件事故現場は十分左側通行が可能であつたにもかかわらず、該路上の進行方向右側を被告山下と対面しつつ進行し、しかも俯向き加減で前方を十分に注視せず、且つ当時該路上には多数の人が溢れていたにもかかわらず全速力で自転車を進行させていたのであつて、そのため被告山下の自動車を確認することができず、自転車の前車輪を同被告の運転する前記自動車の左中央部バンパー附近に激突させてその場に顛倒したものである」と述べた。(証拠省略)

理由

一、原告等の長男である訴外亡川上征彦の乗用する自転車が原告等主張の日時場所において被告山下年久の運転する軽自動車と衝突し、右征彦はその場に顛倒して負傷し、そのために死亡した事実は当事者間に争がないところ、成立に争のない甲第二号証、第三号証の三、七、九、十及び十三の各記載、証人高嶋小六、北崎定雄の各証言、原告川上中(第一回)、被告山下年久の各本人尋問の結果並びに検証の結果を綜合すると、本件事故当時現場附近の道路は幅員十・六米の直線道路(この道路は中央部八・一米のみ舗装されていた。)であつて見とおしも良好であるが、被告山下は自己の所有する軽自動車(一九五七年式昌和クルーザー号オートバイ)を運転し、該道路東側端から約二米位内側を時速約三十粁で北から南に向つて疾走し福岡県嘉穂郡穂波町松ケ瀬同町公民館前にさしかかると同公民館から多数の中学生が三々五々出てきたので速度を約二十五粁に減じ、警笛を鳴らし、制動器に足をかけてそのまま進行しつつあつた時、軽自動車の前方約四十米のところに自己と同じ該道路の東端から一・五米位内側寄りの地点を手前に向つて、俯向きかげんで中腰になり、一心にペタルを踏みながら自転車で進行してくる被害者征彦の姿を認め、且つアスフアルト舗装部分に窪みが所々にあることに気づいていたが、自己の軽自動車と被害者の自転車との離合の際における間隔が約一米はあるものと目測し、そのまま進行しても充分すれちがうことが可能であると考え、むしろ道路西側に溢れていた中学生達の方を注意しつつそのまま直進し、両者の距離が三、四米に接近した時突然被害者の自転車がアスフアルト舗装部分の窪みに前車輪をとられ、該道路内側へ倒れかかつてきたので、あわてて右へハンドルをきつてこれを避けようとしたが及ばず、被害者の自転車の前車輪が被告山下の軽自動車左側中央部バンパーに衝突し、被害者征彦はその場に顛倒したこと、征彦は本件事故のため後頭部打撲兼頭蓋内出血の傷害を受け、直ちに飯塚市吉原町所在青山外科病院に運ばれ入院の上治療をうけたが、該傷害のため意識が溷濁したまま遂に昭和三十三年一月三十一日午前零時五十分頃同病院において死亡するに至つたことをそれぞれ認めることができる。他に右認定を動かすに足る証拠はない。

二、ところで自動車その他の高速車輛を運転するものは、道路の状況、交通量の繁簡その他路上の具体的事情に即し、特に対向する車輛の動向に注意を怠らず、必要に応じて、減速、方向転換等適当な措置を講じ、安全に離合することのできるよう運転進行すべき注意義務があるものといわなければならない。これを本件の場合について見るのに、被害者は充分に前方を注視せず被告山下の軽自動車に気付かず、且つ路上に中学生が多数溢れていたのであるから、かかる場合には被告山下は軽自動車の運転者として更に速力を減じて除行し、安全に離合し終るまで対向の姿勢態度に終始注意を怠らず、あるいは自ら可能な限り該道路西側に避譲する等離合に際して相手方の自転車との間に相当の間隔をおいて通過するよう配慮し、被害者が被告山下の軽自動車に気付いて急遽狼狽し、あるいは路面の窪みのために平衡を失う等異常な行動に出ることがあつてもこれと接触衝突を来たさないよう危険の発生を未然に防止する注意義務を怠つた自己の過失が一因となつて本件事故を発生させたものであるといわなければならない。よつて同被告は自動車損害賠償保障法第三条により、右事故によつて亡征彦が蒙つた損害および原告等が蒙つた精神上の損害を賠償する義務がある。

三、そこで損害賠償の額について考えるのに、

(一)  先づ原告等が主張する亡川上征彦の得べかりし利益の喪失額に関しては、成立に争のない甲第一、第四号証の各記載、証人中村テイ子の証言並びに原告本人川上中(第一、二回)の供述を綜合すると、右征彦は昭和十五年三月二十日生れで昭和三十一年三月に桂川中学校を卒業し、昭和三十二年二月より飯塚市吉原町の合資会社中村精肉店に住込店員として勤め、配達等の仕事に従事していたが、同店での本件事故当時における月収は一ケ月金二千五百円(但し食事費、被服費等は前記中村精肉店の負担であつた。)、半年前の賞与金三千円であり、従つて同人の純収益は同人の死亡前一ケ年間は平均一ケ月金三千円であつたことが認定できる。そして同人は死亡時満十七才十月で健康な青年であつたことは前顕甲第一号証並びに原告本人川上中(第一回)の供述によつて認められるところ、満十七才十月の健康な男子の平均余命年数が少くとも四十七・九五年であることは当裁判所に顕著であり、従つて同人が将来前記中村精肉店を退職したであろうと考え得るような特段の事情の認められない本件においては、同人は右余命の範囲内である満五十五才に達するまでの三十七年二ケ月間は右精肉店に勤務し、少くとも右と同程度の収益をあげ得たものと推認するのを相当とする。結局征彦は少くとも向後三十七年間にわたり一ケ月につき金三千円の割合による得べかりし利益を失つたものであつて、ホフマン式計算法により利率年五分の中間利息を控除すれば、前記の喪失した得べかりし利益の全部を加害者側に一時に賠償させる場合の金額は金七十四万二千百十七円(円位未満は四捨五入以下同じ。)となることは計数上明らかである。

次に被告等は本件事故については被害者征彦にも過失があると主張するから検討するのに、被害者征彦は該道路上に多数の中学生が溢れていたにもかかわらず中腰になつて相当の速度で進行し、且つやや俯向きかげんで充分に前方を注視していなかつたことはすでに認定した通りであるところ、右事実並びに本件事故発生に関する前認定の事実関係に鑑みるときは、右征彦は対面交通に関する法規に違反して進行方向に向つて右側道路上(該道路東側端より一・四米位内側の地点)を通行し、又自転車のような軽車輛を操縦する者として努めて自動車のような高速車輛には道を譲るべきであり、殊に前記のように路上に人が溢れていて道路の幅員を自由に利用しにくい場合にはややもすれば反対方向から来る自動車等に接触する虞があるのであるから、被告山下の警笛に応じて速かに下車して避譲する等接触衝突の危険を自ら避けるべきであるのにそのような配慮を著しく欠き、そのために本件事故発生の重大な一因をなしたものといわなければならない。被告山下の損害賠償の額を定めるについては以上の事情をも斟酌すべきものであるところ、被害者征彦の右の過失の程度は加害者のそれよりも重く、両者の過失に関する前認定の事実を比照するとその度合は加害者三、被害者七の程度と見るのが相当であるからこの点を考慮して右征彦の被告山下に対する得べかりし利益の喪失による損害賠償の額を算出すれば金二十二万二千七百五十五円となる。そして原告等は川上征彦の実父母として相続により各自の相続分に応じ、右損害賠償請求権の二分の一すなわち各金十一万一千三百七十八円の請求権を承継取得したものといわなければならない。

(二)  つぎに原告等の主張する慰藉料額について考えるのに、被害者川上征彦は原告等の長男であり、本件事故による死亡当時未だ満十八才にも達しない前途ある青年であることはすでに認定した通りであつて、その死亡によつて原告等の蒙つた精神上の苦痛が深刻であることは容易に推認し得るところであるが、原告川上中(第一、二回)、被告山下の各供述によると、本件事故後被告山下は原告等に対し金一万円の香典を贈り、征彦の葬儀に際しては花環二個を供え、その後も数回にわたつて原告等を見舞い菓子折などを仏前に供えていることが認められるところ、これらの事情に、本件事故発生の原因として被害者征彦の過失の占める割合が前認定のようにきわめて大きいことを考慮すれば、慰藉料の額は結局原告等各自についてそれぞれ金三万円が相当である。

したがつて原告等は被告山下に対し各自以上(一)並びに(二)の合計金十四万一千三百七十八円の各損害賠償請求権を一旦取得したことになる。

四、しかし被告山下が前記軽自動車の保有者として被告会社との間の保障法に定める自動車損害賠償責任保険契約を締結してをり、本件事故については同法第十七条に基き被告会社から原告等に対し仮渡金として金十二万円が支払われていることは当事者間に争がなく、成立に争のない甲第五号証及び乙第二号証の各記載証人石橋惇明、野田健蔵の各証言並びに原告川上中(第一、二回)の供述を綜合すると、右金十二万円は原告川上中名義で受領されたものであるが、その後自動車損害賠償責任保険小倉共同査定事務所により本件事故による保険金の支払の査定額は金十二万三千九百十六円と決定され、本訴提起後の昭和三十四年七月三十日付で原告川上中に対しその旨の通知がなされたこと、前記仮渡金と右決定査定額との差額金三千九百十六円は原告川上中において未だ受領していないことが認められるところ、以上の事実よりすれば結局原告川上中名義ですでに金十二万円が同法第十六条による損害賠償額として支払われたものと認めるべきである。

ところで同法は自動車事故によつて人が死傷した場合において被害者保護の見地からその第三条において損害賠償責任に関する民法の不法行為の制度についての特別法を設け(このことは同法第四条の規定と対比すれば明らかである)、他方において自動車事故による損害賠償を直接且つ現実的に保障するための方法として自動車損害賠償責任保険制度を創設し、自動車一両ごとに強制的に右保険契約を締結せしめ被害者の損害のうち一定限度額(本件事故当時においては昭和三十五年八月四日政令第二二七号による改正前の同法施行令第二条により、死亡した者については金三十万円)までの分は右の保険によつて支払が受けられるものとし、且つ右の保険金の支払については第一に加害者側が先ず被害者側に損害を賠償し、次に賠償した加害者側(被保険者)が自己が支払をした限度において保険会社から保険金の支払を受けるという方法の他に、第二に前記のように被害者加害者双方の便宜のために同法第十六条により被害者側が保険会社に直接請求し得ることとしているのである。従つて同法第三条の適用がある範囲内ではこれと別に民法の規定による損害賠償請求権は並存せず、また加害者の賠償金積立の性質を有する右保険金の支払が、それがなかつたものとして民法上具体的に算定された賠償額よりも少いときは,その保険給付を控除したものが賠償として与えられると見るのが合理的である。すなわち被害者が保険金の支払をうけたときはその限度において被害者の財産上精神上の損害賠償請求権は消滅すると解すべきである。そして本件の場合亡征彦の直系尊属である原告等が優劣なく同一の割合で右征彦の損害賠償請求権を取得し且つ同一世帯を営んでいるのであるから、反対事実の立証のないかぎり右保険金の請求及び支払の手続は原告川上中において原告等を代表してなされたものと認めるべきである。従つて右保険金の支払の効力を弁済の法定充当の規定を類推して各自の損害賠償額に応じて等分した額において認めるのが相当であるから原告等の前記各損害賠償請求権のうち各自金六万円の限度においてすでに消滅したものと解すべきである。

そこで被告山下は各原告に対し各残金八万一千三百七十八円及びこれに対する本件訴状訂正の申立書が同被告に送達された日の翌日であることの明らかな昭和三十六年二月二十四日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をする義務がある。

五、次に被告会社は自動車損害賠償責任保険の保険会社として被害者征彦が本件事故により死亡したことによつて原告等が取得した前記三の金十四万千三百七十八円、原告両名分計金二十八万二千七百五十六円の損害賠償請求権については、右金額が前記政令に定められた金三十万円の限度内であるから、原告等の直接の請求により保険金の支払をする義務があるところ、うち金十二万円はすでに原告等に対し支払済であることは前認定の通りであるから、原告各自に対し残額金八万一千三百七十八円を支払うべく、結局被告会社も原告各自に対し各金八万一千三百七十八円及びこれに対する本件訴状が被告会社に送達された日の翌日であることの明らかな昭和三十四年五月十二日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある(被告山下及び被告会社の原告等に対する右各債務は所謂不真正連帯債務の関係に立ち、被告山下が右金員を支払つた場合にのみ保障法第十五条の規定により被告会社に対しその限度において保険金の支払を請求し得るものと解すべきである。

よつて原告等の被告等に対する本訴請求は右に示した限度において理由のあるものとしてこれを認容し、その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条本文、第九十三条第一項本文を、仮執行の宣言につき同法第百九十六条第一、三項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 川渕幸雄 岩隈政照 松永剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例